夏休みの読書

2025年07月21日

夏休みと言えば、旅行というのがコロナ前までの定番だった。往復の移動中に読む本をすぐに取り出せるところにしまい、乗り物が動き出すとともに本を開く。しかし当然のことながら、佳境に入ったところで目的地に着いてしまう。それでも残りは旅行中に読もうと思っては、挫折するということの繰り返し。旅先ではあちこち見て回りたいし、美味しい食事も楽しみたいし、観劇やコンサートにも行きたい。というわけで、毎日本を持ったまま出かけはするが、本を読める場所がなかったり、時間が足りなかったりしてなかなか読み進めない。そのうちに本屋を見つけ、ついたくさん買い込んでしまい、帰る前には持ってきた本も読み終えていないのに、新しく買った本でいっぱいの荷物を自宅宛に郵送するのがお決まりだった。

もちろん、細切れの時間でする読書は効率も悪いし、困ったことにあまり記憶にも残らない。一話ずつが短い軽いエッセイや、短編集ならそれでもいいが、実のある読書をしたい時にはそれでは困る。毎日数時間居座ることのできるカフェや、程よく空いている公園のベンチ、あるいは自宅ならすぐコーヒーが淹れられるキッチンが最適なのだが、旅先ではなかなか落ち着いて読書をすることはできない。

そこで、読書以外何もせず、のんびり過ごすことのできるコンドミニアムや貸別荘のようなものはないかと随分探したが、かえってホテルより高いものばかりだった。海外ならあるかもしれないとサーチしてみても、結果は同じ。結局は、ビジネスホテルのような、必要最低限の設備のあるホテルか、ホステルやゲストハウスのようなところで、近くに図書館のある宿に長期滞在するよりない。個室で長期滞在できる宿は限られており、下手をすると、室内や館内、近隣のどこにもゆっくり読書できるスペースがないことがある。

そんな折、見つけたのがコンフォートホテル。ライブラリーカフェを備えたホテルで、朝食も無料、しかもコロナ禍の頃には格安でマンスリープランを提供していた。近くのビーチでのんびりするもよし、ホテルの目の前のカフェでまったりするもよし。もちろん、ホテル内のライブラリーカフェで、飲み放題のアイスコーヒーをおともに、ライブラリーにある本を読み耽るもよし。その節は大変重宝させて頂いた。

読書好きの理想はイギリスはウェールズにあるという図書館ホテルだが、ウェールズはいかにも遠い。日本にも、図書館隣接のホテルはあるようだが、お値段の方はかなりのもの。せめて二週間ぐらいはステイして、5、6冊ぐらいは読み終えたいところだが、費用面を考えると、自宅のキッチンで読むのが一番安上がりで、涼しくて、静か(深夜に読めば)ということになる。

いつか、費用面で長期滞在できる図書館ホテルが、日本にオープンするといいなあ。そんなことを夢見つつ、今日もまだ全巻揃えた個人訳プルーストの続きに取りかかれずにいる。やはりかつて途中まで読んでそのままになっているハイデガーや、本が分厚過ぎて読み進めるのが一苦労なドゥルーズ、意味不明かつ分節不能で挫折したジョイスにももう一度挑戦したいと思いつつ、歳月が過ぎてゆく・・・








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